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2006年夏休み(お盆休み)特別企画・自由研究・葉上のワンダーランドと「死の谷」

2006年8月16日(水曜日)に近所の裏山に接する路上で写真取材を行いました。

2006年8月21日(月) 更新分は こちらです。
2006年8月23日(水) 更新分は こちらです。
2006年8月28日(月) 更新分は こちらです。

葉の上は虫たちのワンダーランド

住宅街の上にある山のすそ
左手の画像。珍しく風景写真っぽいですが。
右手はちょっとした裏山の裾である。気が向くとここに来て、草木の葉の上や排水溝の中を眺めるのが好きです。
葉の上は虫にとって生活の場であると同時に、喰うか喰われるかの勝負の場でもあります。
従ってそこには、生々しいというか生き生きとした虫類の姿が見られます。


花の上には、隠れるようにへばりついているエビグモがいます。
( カニグモかも知れませんが )
花にへばりつくエビグモ 花にへばりつくエビグモ
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そのすぐそばでは、ゾウムシ(アイノカツオゾウムシ)がヨモギの葉を食べています。
ヨモギの葉を食べるアイノカツオゾウムシ ヨモギの葉を食べるアイノカツオゾウムシ
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少し離れたところでは、アリ(エゾヤマアカアリ)がアブラムシから蜜を集めていますし、
その奥ではバッタ(ハネナガフキバッタ)が交尾をしています。

アブラムシに群がるエゾヤマアカアリ 後尾中のハネナガフキバッタ 後尾中のハネナガフキバッタ
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このように葉の上というのは実に生命力に満ちた場所なのです。

そして「死の谷」へ

コンクリートの排水溝は「死の谷」
その一方で、ほぼ死の世界といっていい場所があります。
そのすぐ下を走っているのが、コンクリートブロックで出来た排水溝です。
これを「死の谷」と呼んでいます。

何故かというと。
今年の夏は格別に雨が少ないこともあって、溝の底はカラカラに乾いています。
そこにいる生き物の多くは、死を待っているより他にないからです。



乾いて死にかけのミミズ・すでにアリがたかっている
一番目立つのはミミズでしょうか。
上から落ちて来たのか、ブロックの継ぎ目から這い出て来たのかは分かりませんが、二度と土中に戻ることは出来そうにありません。
渇きのため死にかけています。

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死にかけの毛虫・落ちていた葉を食べて命を繋いでいたが・・・
あるいは葉の上から落ちたか、別の葉に移動しようとしてか落ち込んで来た毛虫。
まれ脱出に成功するものもいるようですが、落ちている葉を食べて餓えをしのぎながらも、死を待っている毛虫がほとんどです。

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森の掃除屋・埋葬虫

これらの生き物が死んだあと、シデムシたちがその屍を食います。
死臭に誘われて「死の谷」にやって来たのでしょうか。
旺盛な食欲で屍を片付けて行く彼らは、「森の掃除屋」とも呼ばれます。
また食べた死骸を土に埋める習性もあることから、「埋葬虫」とも書かれます。

下の画像・左:オオヒラタシデムシ
下の画像・中:死んだミミズを食べるオオヒラタシデムシ
下の画像・右:同じくミミズを食べるシデムシの幼虫。(装甲したワラジムシみたいだ)
オオヒラタシデムシ オオヒラタシデムシ オオヒラタシデムシ
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キンスジコガネの腹部に、頭部を突っ込んで食べているシデムシがいました。
そこからはボリボリとかシャクシャクという音が聞こえてきた程でした。
その旺盛な食欲が伺い知れます。
キンスジコガネの腹部に頭を突っ込んで食べるシデムシ キンスジコガネの腹部に頭を突っ込んで食べるシデムシ キンスジコガネの腹部に頭を突っ込んで食べるシデムシ
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「死の谷」

コンクリートの壁を登り切れないシデムシ
ですが「死の谷」には恐ろしい罠が待っています。
屍を食らった彼らもまた、そこから出ることが出来ません。
コンクリート製の垂直の壁は、途中まではあがれても、のぼりきることが出来ないのです。
地面を這い回ることの多いシデムシには、コンクリートで出来た垂直の壁は手におえない断崖絶壁のようなものかもしれません。

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死の谷に横たわるシデムシの死骸
そこでは、たとえ餌が次々とあったとしても、暑さと乾燥のために死ぬ運命にあります。

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シデムシ(幼虫)の死骸をひいていくアリ
「死の谷」に出入り出来るのは、羽根のある虫を除けば、アリだけです。
驚いたことにアリは、自分の何倍もあるシデムシの死体をくわえて、垂直の壁をのぼりきるのです。
画像ではシデムシの幼虫の死骸をクロヤマアリがひいています。

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コンクリートの排水溝は「死の谷」
一見、何事もないコンクリートの排水溝ですが、そこには命がけのドラマが展開されているのです。
時には目線を下げて、虫たちの視線に近づけて見て下さい。
きっと何か新鮮な発見があると思いますよ・・・。






2006年08月18日(金曜日)

死の谷・葉上のワンダーランドその後・2006年8月20日(日曜日)

ニクイロハバヤスデの後ろ姿(?)
前回の撮影から3日ほどおいて、また「死の谷」を覗いてみました。
その前日にほぼ一ヶ月ぶりほどの雨が降ったので、少し様相が変わっているのではないか、との期待があったのですね。

するとめずらしい生き物を見つけました。
左の画像にある、ニクイロハバヤスデとみられるヤスデです。
通常はヤケヤスデのような細身で小さな種しかみかませんので、大変貴重に思われる画像です(個人的にですけどね)。


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左:大きさ比較のために筆者の指を添えて撮影してみました。 体長約3センチというところでしょうか?
中:雨のため草の中からでも出てきたのかな?死の谷に落ちて弱っているらしく、壁を登ろうとしてひっくり返って自力では元に戻れません。
右:筆者の指先にクチキムシと思われる小型の甲虫がやって来ました。
筆者の指とヤスデ 裏返ったヤスデ 筆者の指とヤスデとクチキムシ
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スジクワガタのメス
また死の谷に落ちて裏返っている虫の中に、明らかにシデムシとは異なるものがいました。
手に乗せてみると、どうやらスジクワガタのメスのようです。
死の谷のような場所にいるので、エンマムシか何かとも思いましたが、クワガタのようです。
ニクイロハバヤスデと同じように雨で草地からでも出てきて落ちたのでしょう。


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左:元気がないのか死んだふりなのか、急に人間につかまって気絶したのか動きません。
中と右:少しすると回復したので林に返してやりました。
本当はこういう生き物の生死に関与すべきではないのかも知れませんが。
考えてみれば、あのスジクワガタ、前も死の谷に落ちていた気もします。
とんだドジでスットコドッコイなのかも知れません。スットコクワガタかも。
裏返しのスジクワガタ 正面からアップ 正面からちょっと引いて
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視点を葉の上へ

ミヤマフキバッタの後ろ姿
視点を「死の谷」から葉の上に移してみると、笹の葉の上にミヤマフキバッタがいました。
このバッタは子供のころ「ショーユバッタ」と呼んでいました。つかまえると口から、醤油ににた液を出すためです。


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サッポロフキバッタ
隣のドングイ(オオイタドリ)の葉をみると、サッポロフキバッタがいました。
なんとなくイモムシっぽい体型をしています。
ちょっとピンボケしてますが、アップでみると こんな感じです。


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めずらしく蝶の撮影に成功しました。どちらかというとクモとか地を這う虫の写真が多いこのサイトではめずらしいものだと思います。
これは趣味もあるのですが、デジタルカメラの性能による部分もあります。
このサイトに使われている写真はすべて リコーのDC-3Zという機種で撮影 しています。
画素数35万にしてはきれいな画像が撮れるのですが、データの書き込み速度というのかシャッター速度というのか分かりませんが、動いている被写体をとらえきれないという弱点があります。
羽の動きがある蝶やハチ、地を這う虫でもムカデやゲジのような脚の速いものはなかなか撮影出来ません。

ギンボシヒョウモン ギンボシヒョウモン横から


花の上にいるハサミムシ
コブハサミムシだと思います。植物性、小昆虫(アブラムシや蛾の幼虫)など雑食性のハサミムシ。
喉が乾いて花の蜜を吸いに来た、というのは童話的過ぎますね。



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花の上にいるクロモンサシガメ
同じく花の上にいるクロモンサシガメ。
昆虫の体液を吸うそうですから、獲物を探しているのでしょうか?
こいつに刺されると痛いそうです、というか痛かった。
経験者は語る



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ハムシの体液を吸うアブ?
昆虫の体液を吸う、といえばこんなシーンもみました。
アブの一種・・・かな?
虫をとらえて体液を吸うアブはムシヒキアブ科だそうです。



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アイノカツオゾウムシの交尾
先日もみかけたアイノカツオゾウムシ。
今日は交尾中でした。
しつこく撮影していたら気に障ったのか 逃げていきました。
最後はヨモギの 葉の裏に隠れるようにして。
邪魔して悪かったねえ・・・。



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たぶん蛾の幼虫
こんなのいましたけど、なんだか分かりません。
まあ蛾の幼虫だと思うのですが、手元の図鑑をみても分かりませんでした。



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オイラの脚を刺す蚊
と、まあ今回はたくさんの写真が撮れましたが、その間にはこんな苦労もありました。
虫除けスプレーをつけてるんだけど、汗で流れてしまうのか、蚊の多いところもあるので、何カ所かは刺されてしまいます。
この蚊は写真を撮ったあと、血を吸われる前に叩きつぶしました。
もっとも歳のせいか、痒いのは一時間くらいで治まるんですけどね。



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おまけ画像(1)自宅前の路上で撮影した ヒナバッタ。「シャッシャッ」と鳴く。
※クルマバッタとご紹介しましたが、小樽市博物館学芸員の方からご指摘戴きました。
おまけ画像(2)バッタを写していたら近寄って来た 近所のネコ(ナナちゃん)
※にゃーん、と鳴く。がばいーん( 唐沢なをき先生風)


2006年08月20日(日曜日)

追記〜「死の谷=U字溝」は自然環境への脅威・2006年8月23日(水曜日)

今回のレポートについて、小樽市博物館学芸員の方からメールを戴きました。

それによりますと、一般に「U字溝」と呼ばれるコンクリート製の排水溝には、エゾサンショウウオやエゾアカガエルなどが産卵するものの、上陸出来ずに死んでしまうことが多々あるようです。

またU字溝を探し歩き、そこにはまっている昆虫を採集するというテクニックもあるそうです。

さらに「U字溝」「昆虫」で検索すると、U字溝により自然環境が破壊されいる事例が多々紹介されております。
ご興味をもたれた方は、一度検索を掛けてみると面白いでしょう。

2006年8月23日(水曜日)

追記〜「何故、シデムシは死の谷から飛んで逃げないのか・2006年8月28日(月曜日)

羽のある虫以外では、アリくらいしか「死の谷」から出られない、と書きましたが。
中には逃げ出せる虫もちゃんといます。
脚の力が強い、というか登攀力のあるタイプですね。
体が大きすぎる虫には不利なようですが、エゾアカガネオサムシ(下段左と中央)などは壁を登り切ります。
あるいはイタドリの葉から落ちたアカオニグモの(同・右)幼体も簡単に登りました。

エゾアカガネオサムシ・斜め上から エゾアカガネオサムシ・上から U字溝内のアカオニグモ幼体
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平たいわりにずんぐりした印象のあるシデムシは登攀が苦手なようです。
さて、それでは、何故シデムシは、飛んで逃げ出さないのでしょうか?
甲虫類なんだから空を飛んで逃げ出せばよいと思うのですが、何故かそうはしません。
その理由をいくつか考えてみました。

(1)死の谷は狭くて離陸が出来ない。
(2)飛ぶのが苦手である。
(3)飛ぶことが出来ない。

一般に甲虫は、木の枝などを登り詰めて、てっぺんまで登り切ると羽を広げて飛び立つ習性があります。あるいは木や草花の上から落下した際に、地面に落ちる前に羽を拡げ飛行したりします。
テントウムシやハムシ、カミキリムシモドキなど小型の甲虫に顕著に見られますが、クワガタムシなど大型の甲虫ではあまり見かけません。(単に大型甲虫が活発に飛ぶ場面に遭遇しないだけとも言えますが)
ただ死の谷に落ちて出られないクワガタムシは見かけますから、羽を広げるのに不自由だという仮説は捨て切れません。

また「飛ぶのが苦手」というのもあり得ないことではありませんし、死の谷で弱っていて飛ぶことが出来ない、ということも考えられますが、検証は難しそうです。
一匹のシデムシを手に取って、空中高く放りあげてみました。
しかし途中で羽を広げることもなく、乾いた音をたてて草むらに落ちてしまいました。まったく飛ぶ気配はありません。
かと言ってこれだけで、シデムシが飛ばない虫、飛ぶことが苦手な虫とは断定出来ません。
この方法で検証するなら、もっと多くのシデムシを何度も繰り返し放りあげ、さらに他の虫の場合とも比較しなくてはなりません。
それはちょっと大変すぎるので・・・。

そこで!一番確実に確かめられるのは、(3)の「飛ぶことが出来ない」を調べることにしました。
方法は、死んだシデムシの体を調べる、というやり方です。
シデムシの前羽を無理矢理こじ開けてみました。

前羽をこじ開けたシデムシ 前羽をこじ開けたシデムシ

するとシデムシには後羽がありませんでした。いや、わずかに前羽の根元に痕跡と言ってもいいような薄い後羽が、ほんのわずかに確認出来ました。
死んでから羽だけを喰われた、羽だけが縮んだ、ということは考えられません。
虫の死骸では羽だけが残っているということがよくあります。
シデムシの後羽(飛行に使う羽ばたく羽)は退化して、ほとんどないようです。
生きているシデムシの後羽をこじ開ける気にはなりませんが、たぶん間違いないでしょう。
地を這って死骸を食べる生活の中で飛行する力は失われたようです。むしろ体を守るためなのか、前羽がやけに厚い印象すら受けました。

ダニにたかられたシデムシ
このように地表での生活に順応した甲虫・シデムシですが頑丈な体にもかかわらず、死の谷では乾燥による死や、ダニにたかられて弱っていくこともあります。
全ての野生動物にはダニが寄生している、と聞いたことがありますが、それにしてもこのダニの量はすごい。
まるでダニのネックレスをしているようです。
(書いていて背筋がザワザワして来ました)

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そして「死の谷」の外では、イタドリハムシ(下・左と中)やテントウムシ(ナミホシテントウ・紅色型十九紋型)が餌をはんでいました。
彼等は「死の谷」に落ちても帰って来ることが出来る虫たちです。

イタドリハムシ・上から イタドリハムシ・前から テントウムシ(ナミホシテントウ)紅色型十九紋型
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2006年8月28日(月曜日)

「これは同定が間違っている!」と発見された方は、
"おなら出ちゃっ太" まで、お知らせ戴ければ幸いです。
by おなら出ちゃっ太
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